ブルーダイヤを探せ  第1話

 それはある雨の日のことでした。
 毎日営業休業の「JAM'S探偵事務所」にお客さん(依頼人)が来たのです。やみのすけ兄(ニイ)なんてビックリしちゃって、カップラーメンの麺を喉に詰まらせる始末(バカだね〜、それでも探偵?)。

 依頼人はみすぼらしい身なりの、地味なおねえさん。年は25歳くらい。よく見ると、色白で美人。瞳は灰色で外人みたい。名前はマリアっていうんだって。彼女は大きな絵を抱えていました。アタイ(むかねこ)がコーヒーを持っていくと、彼女はかぼそい声で話し始めました。
「ウチ、すごい貧乏で」
「はあ、いかにもそんな感じですね」
「コラ、やみのすけ兄ったらそんなこと言っちゃダメでしょ」
「すまん、すまん、でどんなご用で?」
「借金のカタに家をとられそうなんです」
「はあ」
「母がずっと病気で…私が面倒を見なくてはいけないし、病気の治療代や薬代などで、だんだん借金が増えてしまって……」
「それは困りましたね〜。でもそれなら別のところに相談した方がよくないですか?ここ探偵事務所なんですけど」
「ええ、だから来たんです。ウチ、今はすごい貧乏なんですけど、昔は大金持ちだったらしいです。祖父はロシア貴族の血を引いていました。それが戦争中に逮捕され、財産も没収されてしまったんです」
「マジ?そりゃお気の毒」
「でも実は没収される寸前、ロシアのブルーダイヤなど財産のほとんどを領地に埋めて隠したそうです。もっとも今ではそこも人手にわたってしまいましたが……そして祖父は、家族や子孫に、宝のありかを教える絵を描きました。これがその絵です」

 そう言って彼女は、カバーをとり、大きな油絵をやみのすけに見せました。
あれ〜、驚き。だってこれJAM'Sの街の外れにある岬の女神像の絵じゃん。真中に女神像があって、そのまわりを12の敷石がまるで時計のように囲っています。時刻はちょうど3時頃でしょうか、太陽はやや西に傾いており、3時の方向の敷石に影があたっていました。
「ひょっとして昔はここもあなたの家のものだったの?」
「ええ、そうなんです。今では人出にわたってしまいましたが…祖父は宝のありかのヒントとして、”太陽の位置に注意せよ”という言葉を残して亡くなったそうです…絵の中では、太陽は3時の位置でしょ、だから3時の位置の敷石のところを深く掘ったこともあるんです。でも何も出てきませんでした、莫大な経費がかかっただけで……」
「それはそれは」
「でも探偵さん、もう一度探すことは出来ませんか?祖父は確かにこの絵のどこかに隠したというのです。もし宝がみつかれば、家も売らずにすむ。探偵さん、私と母を助けてください」
「うーん…」
そう言ってやみのすけ兄はジーッとその絵を見つめました。
「この絵、あんまりうまくないよねー」
「コラ、やみのすけ兄ったら。そんなこと言ったら失礼でしょ」
「すまん、すまん」
「探偵さんお願いです…」
「う〜ん……う〜ん……、わかりました、やってみましょう」

 こうして美人に頼まれるとイヤとはいえないやみのすけは、没落貴族の宝探しを手伝うハメに……それにしても宝は見つかるんだろうか。次号へ続く