ブルーダイヤを探せ  第2話

前号までのあらすじ

 万年営業休業みたいなJAM'S探偵事務所に依頼人が来た。貧しい身なりのその女性は、元はロシアの血を引く貴族の末裔。今ではすっかり没落し、病気の母親の薬代すら払えない。ついに住んでいる家までとられることに。
 しかし一族には代々伝わる隠された宝があった。マリアの祖父が、岬の女神像のある場所に、埋めて隠したのだという。祖父は宝のありかを示す絵を残していた。やみのすけはマリアと共に「宝探し」をすることに……。

 絵はこんなふうだ。
 海に突き出た岬の真中にギリシャ彫刻みたいな女神像があって、そのまわりを12の敷石が時計のように囲ってる。太陽はちょうど3時の位置にあり、敷石に影を落としている。
 マリアさんは言いました。「『太陽に注意せよ』」っていうのが祖父の遺言なんです。それで3時の敷石をはがして掘り起こしてみたことがありましたが見つかりませんでした。ブルドーザーとかこの掘り起こし作業にも莫大なお金がかかっちゃって私たちは余計に貧乏になってしまいました。もう失敗は出来ません。やみのすけさん、この絵の中にヒントが隠されているはずなのです。どうか私たちの宝を探し出してください」
「って言われてもなー、この絵、ヘタだし」
「ええ、絵が趣味だったらしいですけど、確かにヘタッピですよね〜」
「もー、やみのすけったら失礼じゃないの」。
「これ、おじいちゃんが描いたの?ここにサインがあるね、「Я」って。Rの反対、ロシア文字だね」
「おじいちゃんの名前は倫太郎(リンタロウ)っていうんです。ちょっと気取ってロシア文字風にしたみたいです」
 そんなこんなでアタイたちはマリアさんの家に行ってみました。そこは、元貴族というにはあまりにお気の毒なあばら家。中ではお母さんがひとりベッドに横たわっていました。
「お母さん、探偵のやみのすけさんよ。私達の財産を探し出してくれるって」
「おいおい、待ってよ、まだ探せるって決まったわけじゃないよ〜」
「探偵さん、どうぞ宜しくお願いします」
 ってお母さんなんて泣きそうな顔していうの。本当にこのひとたち貧乏みたい。かわいそう。
「ところでマリアさん、おじいちゃんは絵が趣味だったんでしょ、他の絵も見せてくれない?」
「いいですよ」
 そういってマリアさんは、何枚か絵を持ってきてくれました。
「おじいちゃんは風景画を描くのが好きだったんです」
「うーん、うーん……」
「どうしたの?やみのすけ」
「うーん、うーん……どれ見てもヘタッピだなあ〜」
「コラ!!」

 夕方。喫茶「花の屋」にて。
 はなちゃんが美味しいコーヒーを煎れてくれる。たっぷりの熱いお湯にモカイヌコーヒー。
「やみのすけさん、どーお?謎解けた?」
「うーん、それが難しい。どう見てもなんの変哲もない絵だし。宝なんて隠されているようには全然見えないよ」  やみのすけはいつも、行き詰ると、はなちゃんのところのモカイヌコーヒー飲むの。
「どーぉ、やみのすけ、ひらめいた?」
「ウーン、ウーン、だめだあ」
「モッカー」
「いいな、モカイヌ。おまえはいつも気楽で……おおお!!!わかったぞ!!!」
 そう言うと一目散に走り出したやみのすけ。ちょ、ちょっと待ってよ〜、どこ行くのよ。もういつもこうなんだから!!!