前号までのあらすじ
どうせヒマだからってことで、臨時で子もの送り迎えをさせられるハメになったやみのすけ。相手はマルバツ商事の若田社長の1人息子タケル君だ。
「息子を誘拐する」という脅迫状が届いているとかで、送り迎えにも運転手をつけているのだという。そんな父親の心配をよそに、タケル君はやんちゃなイタズラっ子。今日もサマースクールに行きたくないと、車からガソリンを抜くイタズラを!!
やみのすけが咎めると、お屋敷の庭に続く林の中に逃げ出して……しょっぱなから大苦戦のやみのすけなのでございまちゅ。え?オマエは誰かって?今回の語り手はワタクシ、ちびねこでございまちゅ。
「タケル!!どうしておまえは、言うことをきかんのだ」
「サマースクールなんか行きたくない。ボクはお外で遊んでたいの」
「ちゃんと学校に行かないと立派なオトナになれないよ」
「立派なオトナって?」
「オマエのお父さんだって立派じゃないか」
「パパ?ボクはパパのことなんか嫌いだ」
「なんで?」
「パパはいつも仕事ばかりさ。僕のことなんてなんとも思ってない」
「そんなことねーだろ」
「どうしてわかるの?」
「オマエのことをとても心配してたぞ。誘拐犯とかに狙われないように、こうやって俺を雇ってるわけだし」
「誘拐犯にお金を請求されるから嫌なだけさ。パパが好きなのはお金だけ。ボクはパパなんか大嫌いだ」
そう言うとまたもやタケル君は飛び出して、森の中へ……
「おい、待て!……逃げ足の速いガキだなあ、いったいどこに行ったんだ?…あれ、こんなところに穴が」
なんとそこには小さな洞窟が。やみのすけがずんずん中に入っていくと、やがて行き止まりました。
「オマエ、すげえな……よくここがわかったね」
うしろから声が。
「コラ、タケル!!なにやってんだ」
「すごいでしょ、このほら穴。でももっとすごいのがあるんだ。海まで続いているやつ。やみのすけ、今度、そっちも教えてやるよ」
「エエイ、なんでもいいから早く来い!サマースクールに行くぞ!」
「わかったよ。今日はここを見つけたご褒美にサマースクールに行ってやる」
「なんだとぉ!!生意気なヤツめ」
とまあ、そんな感じで、やみのすけもタジタジなんですわ。で、その日はなんとかなって、問題は次の日――
「さて今日はガソリンも抜かれないように見張っておいたし。タケル!サマースクールに行くぞ〜」
今日は素直に車に乗ったタケル君。やみのすけがエンジンをかけました。
「アレ?…走らない…」
「ハハハハハハハハ」
「コラ、また何かやったな!!!」
アレぇ〜、タイヤがパンクしてる!!!!どうやらタイヤに小さな穴を空けたみたいよン。
「ヤーイ!!ひっかかった、ハハハハハハ」
そう言って昨日と同じように林の中に駆け出したタケル君。やみのすけが必死で後を追いました。
「ハアハアゼイゼイ……どこに逃げたんだ、マジでどこにもいないぞ」
いい加減、やみのすけも心配になってきた。だってマジでどこにもいないんだもん。
ホントにどこにもいない……執事の白髭さんも一緒になって探したけど、やっぱどこにもいない……
なんだかこれってヤバくない?
夕方になりました。屋敷中の皆が顔を青くして探し回っていたときです。メイドさんが屋敷の裏庭の花壇のところで悲鳴を上げました。びっくりして駆け寄るやみのすけ、白髭さん……なんと花壇のところに脅迫状があったのです。
「タケルを誘拐した。身代金10億円を用意しろ。受け渡し場所は後で指示する――誘拐犯」
どっひゃー!!タイヘンなことになっちゃったぁ!!!
どうする、やみのすけ!!!それではまた再来週。ちびねこでした。