完全犯罪達成?!おこちゃまはタイヘンなのだ
第3話  身代金は10億円!の巻

前号までのあらすじ
 どうせヒマだからってことで、臨時で子どもの送り迎えをさせられるハメになったやみのすけ。相手はマルバツ商事の若田社長の1人息子タケル君だ。「息子を誘拐する」という脅迫状が届いているとかで、送り迎えにも運転手をつけているのだという。
そんな父親の心配をよそに、タケル君はやんちゃなイタズラっ子。ところがいつもどおり、サマースクールに送りに行こうとしていた矢先、タケルがいなくなった。そして裏庭の花壇のところに、新聞の文字を貼り付けた置手紙が見つかった。さあ、タイヘン!!!!語り手はワタクシ、『むかねこ番地』のちびねこでございまちゅ〜。

 「タケルを誘拐した。解放して欲しかったら身代金10億円を用意しろ。」
脅迫状は、屋敷の裏庭の花壇のところにありました。手紙は、新聞の文字を切り張りして作ってありました。
 「ガハハハハハ……聞いたぞ、やみのすけ。おまえ、運転手やってたんだってな。ついに探偵廃業か。そんな矢先にこんなことなっちゃって残念だったな〜」
あ、このダミ声は……犬山警部!!相変わらずイジワルそうな顔でゲラゲラ笑ってまちゅ。やなやつ。
 「で、どーだ、やみのすけ。犯人はみつかりそうか?」
 「いや、まだです」
 「手がかりはないのか。オマエがタケル君の最後の目撃者なんだろ?俺はこう推理するゾ。犯人は欲に目がくらんだ男で……」
 「そんなの誰だってわかりますよ、警部」
 「じゃあおまえはどう考えてるんだ」
 「……屋敷のことをとてもよく知っている人間のしわざです」
 「なんでわかる?」
 「脅迫状の置いてあった場所です。警部が来る前に、まわりを調べて見たのですが……屋敷の周辺はいたるところに監視カメラが置かれています。裏庭も同じで、監視カメラが置かれていないのは、脅迫状の置いてあったところ、つまり花壇のところだけなのです。犯人はそれを知っていた、ということは屋敷の内部にかなり詳しい人間ということになる……また表玄関から裏口に続く道にも監視カメラが置かれていますが、カメラには誰も写っていない。犯人は、表玄関からではなく、直接、裏庭から侵入したということになる。屋敷の裏庭にも柵はありますが、表玄関に比べ、警備はゆるやかです。また、裏庭の向こうは国立公園の森に続いていますが、この森は現在、立ち入り禁止です。森には柵が立っていて警備員も巡回しているから、簡単には侵入できない。唯一、森に侵入できるとすれば――海から。海から崖をよじ登り、森に侵入したということになりますが……」
 「そうか。では警備員が犯人だぁ!!」
 「もう、犬山警部ったら!気が早すぎますよぉ」

 次の日の朝になりました。タケル君のお父さんの若田さんは一睡も出来なかったみたい。目が真っ赤でちゅ。
 「お金はいくらでも払います。どうか息子の命を助けてください」
 「すいません、ボクがちょっと目を離したスキに……」
 と申し訳なさそうなやみのすけ。若田社長は目をウルウルさせながら、
 「あの子には母親がいないし。私も仕事が忙しいものですから、いつもかまってやることができないのです。こんなことになるなら……」
 「ねえ、やみのすけ。若田社長って、お金儲けのことばかりいうひとだってみんな言うけど、そんなふうでもない、結構やさしそうな人なんだにゃ〜。タケル君のこと、とても心配してる」
 「ああ」
 とそのときです。電話のベルが!警官たちが録音と逆探知の用意に入りました。若田さんがあわてて電話に出ました。
 「もしもし、私だ。若田だ」
 「息子は預かった。身代金10億円を今から1時間以内に、国立公園の森のはずれの崖のところにある洞窟に持って来い。警察には言うな、ひとりで来い。カバンを置いたらすぐに帰れ。さもないと子どもの命はない、ガチャ」
 「なんだか、今の電話、声が変だよ、やみのすけ」
 「たぶんスプレーだ、声変わりスプレー。ヘリウムガスを飲み込んで喋ると声が変わるんだ」
 警官が言いました。
 「警部、時間が短すぎて逆探知できませんでした」
 「なんてこった!!!」
悔しがる犬山警部……。
 「お金なら用意してあります。今すぐ崖のところに行きます……」
どうなる!!誘拐事件。タケル君は無事にみつかるでしょうか。次回につづきまちゅ。
ちびねこでした。