完全犯罪達成?!おこちゃまはタイヘンなのだ
第4話  タケル君奪回と消えた10億円の巻

前号までのあらすじ
 どうせヒマだからってことで、臨時で子どもの送り迎えをさせられるハメになったやみのすけ。相手はマルバツ商事の若田社長の1人息子タケル君だ。「息子を誘拐する」という脅迫状が届いているとかで、送り迎えにも運転手をつけているのだという。そんな父親の心配をよそに、タケル君はやんちゃなイタズラっ子。ところがいつもどおり、サマースクールに送りに行こうとしていた矢先、タケルがいなくなった。そして裏庭の花壇のところに身代金10億円を要求する置き手紙が。次の日犯人から電話が。街のはずれの崖にある洞窟のところにお金を持ってこいという。若田さんはたったひとりで現場に向かった……

 洞窟は誰もこないような、とってもサミシイところにありまちゅ。
 若田さんはひとりで洞窟に入っていき、そこに身代金10億円のカバンを置き、犯人の指示通り、すぐにその場を去りました。犬山警部たちが洞窟付近で張り込み、犯人が金を取りにくるのを待ちました。けれども……
1時間たっても2時間たっても……だあれも来ない。3時間たち4時間たっても誰も来ない……しびれを切らした犬山警部は洞窟の中に入っていくと……
 「ない、金がないぞ!!!!!」
 お金の入ったカバンだけ消えていたのです!犯人はいつどうやって、カバンを持って行ったのか……。そしてそれと同じくらいの時間に連絡が。タケル君が屋敷の近くの公園で無事、保護されたそうです。
 タケル君はすっかり憔悴していましたが、ケガなどもなく意識もはっきりしていました。タケル君は言いました。「あのあと、やみのすけの手を振り切って森の中に逃げ込んだら、とつぜん知らない男ふたりに目隠しをされて抱えあげられたの。ずっと目隠しされててあとは何も覚えてない」。

 「やみのすけさん、今回はタイヘンだったわね〜」。
花の屋のはなちゃんが、コーヒーを入れながらやみのすけに言いまちた。
 「ホントだよ〜。最初はボクのせいみたいに言われて、もうさんざん。10億円も消えちゃったし。あーあ、モカイヌ、オマエはいいよな、いつもお気楽で」
 「モカァ〜」
 「犯人、推理してみて」
 「脅迫状は監視カメラの映らない死角に置かれていた。犯人はそのことを知っていた、ということは屋敷の内部にかなり詳しい人間だ。表玄関の警備は厳重だ。犯人は森から裏庭に侵入したに違いない。立ち入り禁止区域一帯に相当詳しい人間だ。あと犯人は若田さんの知り合いの人かもしれない。電話の声を声変わりスプレーで変えているから……とすると犯人は……」
 「あー!!やみのすけったらどこ行くんだよぉ、ちょっとちょっと、あー、行っちゃった。もうっ!いつもこうなんだから」

 「ハアハアゼイゼイ…とすると犯人は……あれ、よぉ!ちゅきじゃないか。元気か?」  道端でちゅきに会ったんでございまちゅ。
 「こんなとこで何してんだ、お母さんが心配してるよ、早く帰らないと。送って行ってやろうか。なんだ、ゴキゲンななめだなあ、ちゅき」
 「だってママがさ」
 「ママと何かあったの?」
 「………」
 「子どももタイヘンなんだなあ」
 「当たり前だよ。子どもだってタイヘンなんだよ、やみのちゅけ」
 「ムムム。なんだかわかってきた!ちゅき、ありがとう、おまえのおかげでひらめいたぞ。じゃあな、ちゅき」
 と言ってまた一目散に走り出したんでございまちゅ。やみのすけったら、ちゅきをママのところに送っていくんじゃなかったの?
 ホント、オトナって勝手だわ、ネッ、ちゅき。
 それでは次回謎解きに続きまちゅ〜。