アタシ、きれねこ。
万年休業のJAM’S探偵事務所にお客様が来たんだけど、それがとってもキレイな人で、モデル志望なんだって。でもね、なんだか間違えてるみたい…。
「あのぉ、相談したいんです」
「なんでしょう」
「100万円貸してもらえませんか?」
「は?あのぉ、ウチ、消費者金融じゃないんですけど」
「じゃ、なんなんですか?」
「探偵事務所です」
「探偵事務所?あ、そうなの……」
と言うなりその女の子、ワッと泣き出しちゃった。
「じゃお願い、探偵さんなんとかして。私たちみんな死んじゃうわ」
「そんな〜、死んじゃうとか言っていきなり泣きつかれても……いったい、どうしたのよ、話してごらんよ。ねえねえ、きれねこちゃん、お茶持ってきて。このおねえさんにも」
とそんなわけで、ともかく話を聞くことになったの。
「私、綾香っていいます。職業はモデル。まだ駆け出しですけど。このあいだ、大学時代の仲間と旅行にいったんです。ホラ、あのゴク・モン島です」
「ああ、ゴク・モン島ね、JAM’Sの港から5時間くらいのとこだよね。昔の遺跡とかいっぱいで結構いいとこだってきいたけど」
「いいとこでしたよ。海はきれいだし。遺跡や神殿も行きました。古い建物がいっぱいあるの」
「でも、あの島、幽霊でるって有名よン」
「そうなんです……で私たち、見ちゃったんです、幽霊」
うそ?マジィ?どうやらホントらしいワ。
「話せば長くなるんですけど話します」
そういって綾香さんは話し出したの。オソロシイ、ゴク・モン島の物語を……
「ゴク・モン島の山の中をキャーキャー言いながら歩いていたら、オジイサンとすれ違ったの。そのひとが言いました。
『オイオイ、キミたち、楽しそうなのはいいけれど、あの丘のてっぺんにある小屋は入ってはいけませんよ。あそこは島の守り神の住むところなんだからね』。」
「行っちゃいけないと言われると行きたくなるのが人情だわな」とやみのすけ。
「その通りです、探偵さん。で、みんなで行っちゃったの、そこに」
「あんたもやるねー」
「ええまあ。でね、出たんですよ、幽霊が!小屋は二階建て。中は一面蜘蛛の巣が張ってて、ガランとして何もありませんでした。ところがね、ドアをバタンと閉めたら、急に辺りが暗くなったんです。そして、奥の方に一瞬、人の顔が現れて消えたんです!!」
「ウソでしょ〜」
「いえホントなんですよぉ〜!もうビックリして、みんなで一目散に逃げたの」
綾香さんは顔面蒼白。なんだかホントみたい。
「ところがね、その晩のことなんです。オソロシイことがおこったのは……」
「で、幽霊はわかりましたけど、どうして幽霊と100万円がカンケイあるんですか?」とやみのすけ。
「だからそれを今から話しますってば!!」
そう言って綾香さんは恐る恐る話し出したの。背筋も凍るコワ〜イ話を。
もうアタシなんか震え上がって、トイレの砂かく手も震えたほど。
恐怖の幽霊話のはじまりはじまり〜って感じ。